最近は日銀のYCCの見直しが話題になっていますが、徐々に金利上昇の可能性が高まってきていますね。そこで我々が気になることと言えば、住宅ローン金利。また、金利関係なく、ローンは繰り上げ返済すべきか、迷っている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回の記事では、住宅ローンを借りている人は繰り上げ返済すべきなのか、それとも、このまま月々の返済を続ければ良いのか、FPであり自らも住宅ローンを返済中の私が解説していきます!
先に結論をお伝えすると、「金利が住宅ローン控除率を上回るか、住宅ローン控除が終わるまでは繰り上げ返済不要!」です。
それでは、解説していきます!
住宅ローンを借りているメリット
まず、住宅ローンと言えばなんとなく「悪いもの」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。なので、なるべく早く返済してしまった方が良い、と考えて、繰り上げ返済を頑張る人も多くいらっしゃいます。
しかし、住宅ローンをせっかく借りているのであれば、数々のメリットについても一度整理することをおススメします。せっかく銀行の審査を通過して借りているのですから、最大限にメリットを活かしていくことを考えましょう!
そんなわけで、まずは住宅ローンのメリットを説明します。
その1:住宅ローン控除が受けられる
控除を受けられる期間や金額は、住宅ローンを組んだ時期、対象となる物件の性能、新築か中古か、とった条件によって変わってきます。
詳しく解説されているサイトも多くありますので、ここでは詳細は割愛しますが、一般的には年末時点でのローン残高の1%か0.7%がその年の所得税、住民税から控除されます。
所得控除と異なり、課税額から控除されるので威力抜群。例えば、年末のローン残高が2000万円あれば、1%控除であれば20万円が戻ってくるということです!
しかも、今住宅ローンを控除率以下で借りているならば、差額は利益になってしまいます。残高2000万円のローンを金利0.6%で借りているなら、支払う利息は2000×0.6%で12万円ですが、控除率1%なら20万円、0.7%なら14万円が控除され、差額の8万円、2万円はプラスとなる計算です。
その2:生命保険代わりになる
住宅ローンを組む時には団体信用生命保険、いわゆる団信に加入することになります。基本的には自身が死亡するか高度障害になる、またはオプションを付ければ特定の病気になったとき、ローン残高が0や半額になる、というものです。
つまり、数千万円の生命保険と同じ効果になりますので、生命保険に入っていれば、その金額分について保険金額(受け取り金額)を下げることで、月々支払う生命保険料を下げることができます。
また、オプションとして「3大疾病と診断されたら住宅ローンが半額や0になる保障」に入るならば、医療保険についても見直すことができます!
その3:インフレ対策になる
住宅ローンを組むことで、インフレ対策にもなります。インフレとはお金の価値が下がり、物の価値が上がること。つまり、インフレ時には借入金の価値も下がります。物価が2倍になれば、お金の相対的な価値は半分になり、借入金の価値もまた半分になるということです。
自分のポートフォリオとして、
A: 現金預金100%の場合と、
B: 現金預金20%、不動産30%、借入金50%
だと、Bパターンの方がインフレ耐性が高いという感じ。
また、もし固定金利で住宅ローンを組んでいれば、インフレに伴って金利が上がるような場面においても、安心してインフレメリットを享受することができます。ただ、不動産においては単純にいかない部分もあり、詳細は別の記事で解説しているので、詳しく知りたい方はそちらもぜひ読んでみて下さい!
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その4:現金を温存や別の資産に回せる
インフレの話をした後で矛盾した感じですが、投資の世界ではCash is the King、つまり現金こそが王様、現金を手元に置いておくことが大事であるとされています。なぜならば、現金を持っていることで、投資、教育資金、生活費、何にでも変えることができ金銭的な自由度、選択肢が格段に増すからです。
住宅ローン控除が活用でき、低金利の今であれば、借りた現金を備えとして温存しておくのも手です。
住宅ローンのメリットを受けるために
このように多くのメリットがある住宅ローンなので、負担のない範囲で長く借りていると有利です。そして、そのメリットを安心・かつ最大限享受する上では「住宅ローン控除率<ローン金利」という状況をキープしつつ、なるべく住宅ローン控除期間は繰り上げ返済しない。というのが一つのおススメ戦略になります。
なぜなら、「住宅ローン控除で戻ってくる金額が支払い利息より多い状態」であれば実質プラス収支で、生命保険料の削減効果、インフレ対策をしながら、現金確保ができるため負担なくリスクヘッジできます。また、住宅ローン控除額は年末時点の残債で計算しますし、団信にお世話になるとき、インフレが想定以上に進んだ時等、残債が多いほどそのメリットは大きくなります。
勇み足で繰り上げ返済することで手元キャッシュを減らし、さらに住宅ローンのメリットまで減らしてしまうのはあまり得策とは言えません。
繰り上げ返済しない場合の注意点
このようにメリットが多い住宅ローンですが、繰り上げ返済しないならば気を付けたいことがありますので、3点お伝えしておきます。
1.住宅ローン控除終了後の戦略
住宅ローン控除が終わると、これまでは控除で丸ごと戻ってきていた利子を自分で負担することになります。その時の残債が2000万円、金利0.7%なら、年間14万円が住居費として乗ってきます。
これを負担しながら、残り金額を借り続けるのか、ある程度または全額繰り上げて返済するのか等、想定されるその時の家族の状況も考慮しつつ、考えておくと良いでしょう。
例えば、
「そのタイミングは長男が大学進学、長女も高校進学が重なるから出費が多い。現金は温存したいから5年はそのまま返済を続けて、子どもが独立したら繰り上げ返済しよう。」
と具体的に考えておくと良いでしょう。
2.金利上昇時の対応(変動金利の場合)
現時点では急激な変動金利の上昇は想定し難い状況ではありますが、変動金利が上がったときにどうするかも、しっかり考えておく必要があります。特に、住宅ローン控除の控除率を変動金利が超えると
手出しが発生するようになりますので、このタイミングが来てしまった時の戦略を考えましょう。
例えば、毎年住宅ローン控除で戻ってくるお金は繰り上げ返済用口座を作り貯金しておき、そのタイミングで残債を減らす等、計画的に準備をしていくと良いでしょう。
3.現金はしっかり確保
先ほどCash is the Kingと言った通り、現金が手元にあれば、選択肢が広がります。将来に備えて、住宅ローン控除で戻ってくるお金、住宅ローンによる保険料削減効果等から得たお金等は浪費することなく、しっかり温存しておきましょう。
個人的におススメなのが、元本を保証しつつ少しは利子が付くネット銀行の預金です。今なら、あおぞら銀行などは普通預金でも金利0.2%、メガバンクと比べると大きいですよね!
株式投資でリスクを取って増やすという手もありますが、日本の金利上昇局面においては、国内の株価は下落する方向に圧力がかかりますし、日本の金利が上がれば、通常円高への圧力となるので外貨建ての外国株も目減りする可能性があります。なので、金利上昇時への備えとしてのお金と考えると株式はリスクが高いと考えます。このようなリスク投資は余剰資金で行いましょう!
まとめ
さて、本記事では住宅ローンは「金利が住宅ローン控除率を上回るか、住宅ローン控除が終わるまでは繰り上げ返済不要!」ということをお伝えしてきました。
最後に一つだけ、繰り上げ返済のメリットについてお話すると、完済した際には「ローンの心理的プレッシャーから解放される」という心理的効果があります。
これは、人によってはお金には代えがたいものであることもありますので、最後は「住宅ローンがある」ということがご自身の精神衛生上どの程度の負担なのかも考慮の上、戦略を考えてみると良いと思います!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!