最近、いよいよ変動金利が上がるのではないか、というニュースが増えてきました。賃金上昇を伴う継続的なインフレが達成されれば、マイナス金利の解除が現実味を帯びてきます。
そうなると、変動金利にも影響が出てくる可能性があるため、ローンを組んで家を買うより賃貸で行く方が安全なように思えてきます。
ただ、実際は賃貸でも政策金利の上昇を受けて家賃が上がっていくことは十分考えられるため、持ち家か賃貸か、という点で悩んでいる場合はこの点を考慮した方が良さそうです。
Page 1/4 そもそも家賃がどう決まるのか
当たり前の話ですが、支払っている家賃はその物件のオーナーの利益を確保できるような価格で設定されています。
おおざっぱに書くなら、家賃ー経費=利益、という形で考えられるので、家賃は経費を超えるように設定しなければ赤字になってしまいます。
この経費には、物件の維持管理費、新規入居者募集の際の宣伝費等の他に、大きな要素としてローン返済費が含まれます。
オーナーは基本的には銀行や信用金庫等から融資を受けてローンを組んで物件を購入しているため、それが経費となるわけです。
では、このローン金利が上昇するとどうなるか・・・?
オーナーがやりくり出来る範囲であれば、家賃据え置きにしてくれる場合もあるかもしれませんが、オーナーもボランティアで住宅提供をしているわけではありません。
自身の利益を確保するために、賃料を上げるフェーズが来ると考えるのが自然でしょう。
このように、今世の中で言われるように、住宅ローンの変動金利があがり、住宅ローンを借りている人が厳しい状況になるようなことがあれば、結局賃貸であっても、オーナーの金利負担を入居者が負担する形で影響を受けてしまうのです。
Page 2/4 実際にオーナーは家賃を上げてきている
近年、建築資材価格の高騰や、人手不足などの影響で、新築のマンションや戸建ての価格がどんどん上がっていることは広く知られていますが、その影響は新築建設だけではなく、既存住宅の補修などにも及んでいます。
その結果、新規物件を建てる、既存物件を貸せる状態で維持管理していく、いずれにしても以前のような金額感では回らなくなってきています。そうなると、オーナーは賃料を上げる方向に動きます。
例えば、こちらの記事では主要都市の家賃高騰について紹介しています。
2023年の家賃相場について、旭化成ホームズ・へーベルメゾンが解説します。 …
例えば、東京23区でみると、このように家賃相場は右肩上がり。
今でさえこの状況なのですから、金利が上がってしまえばさらに厳しい状況になることは予想できます。
Page 3/4 住み替えの際は要注意
一方、家賃は現居住者がいると、なかなか上げられないという側面はあります。オーナーにとっては、家賃を上げることで今の居住者が出て行ってしまうと、次の居住者が見付かるまで、その物件からの収益が途絶えてしまうため、あまり強く出ることが出来ないことがあるからです。
しかし、このような慣習を過度に期待することはやめた方がよいと考えます。
オーナーとしては「今の入居者が出た後、新規募集時に賃料を上げる」ということから始めることが多いと思いますが、全体的にこういった物件が増えれば家賃相場はおのずと上がり、現居住者に対して賃料UPを申し入れる正当性はどんどん増していきますし、それが嫌だから退去したとして、安く借りられる物件は市場から無くなっている危険性があるからです。
そうなると、借り手側としては、住み替えの際に同じくらいの条件で探すと、家賃が上がってしまうため、色々と妥協しなければならなくなりそうです。
また、賃貸のメリットとして「自分の収入に応じて、無理なく払える家賃の家に気軽に引っ越せる」ということが言われますが、今の物件の家賃が厳しいからダウングレードしよう、と考えたときに、選択肢として上がるのは、今よりも2ランク程度下げたかなり条件の悪い物件となることも考えられます。
Page 4/4 まとめ
賃貸は銀行から直接入居者がお金を借りているわけではないので、政策金利の上昇に即応性があるわけではないと思いますが、賃貸ならずっと家賃は上がらない、むしろ物件が古くなれば家賃を下げてもらえる・・・こんな状況は、超低金時代の終わりとともに無くなっていくのではないでしょうか。
もし、今後10年かけて変動金利が3%くらいまで上がっていくような場合、その負担分が乗せられた家賃を支払い続けるのと、今住宅ローンを固定金利で借りて支払っていくのでは、どちらが良いのか?
単純に「金利が上がるのが怖いから賃貸にしておこう」と考えるのではなく、しっかりシミュレーションしてみることが重要なのではないでしょうか。